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Point

2.感染対策と消毒の目的


ポイント:

人は、(1)体の中の防御力の弱い部分から微生物が侵入してしまうことと、(2)侵入した微生物が人の体内の抵抗力に打ち勝って増殖してしまうこと、の2つが発生して、はじめて感染症にかかります。
在宅療養者、家族、在宅ケアスタッフが日常的に行う感染対策と消毒の主な目的は、(1)を発生させないこと、つまり在宅療養者の体内に微生物が侵入するのを防ぐことにあります。

■微生物はいたるところに存在

細菌、ウイルス、カビ*などをまとめて微生物といいます。微生物のひとつひとつはあまりにも小さくて肉眼では見えませんが、いたるところに存在しています。家庭内や病院内を含めた社会や、自然のさまざまな環境にあまねく存在し、微生物の存在しない場所はむしろ特別な場所であるといえます。

いつも湿っている場所や目に見えて汚れている場所には、特に多数の微生物が存在します。たとえば、カビが目に見えるほど生えている場所には無数のカビが存在しますが、そのほかの場所にもカビは目に見えないで存在しています。

そして人自身の皮膚、口や鼻や咽喉(のど)の中、そして腸の中などにも多数の微生物が存在します。しかし、人にはさまざまな防御力や抵抗力があるので、普段は感染症にかかりません。また腸の中の細菌の一部など、人の健康を支える役割を果たしている微生物も存在しています。

しかし、人にはさまざまな防御力や抵抗力があるので、普段は感染症にかかりません。また腸の中の細菌の一部など、人の健康を支える役割を果たしている微生物も存在しています。


【専門用語】* 糸状菌(真菌の一種)
【医療従事者のためのリンク】グラム陽性菌  グラム陰性菌  ウイルス  酵母菌  糸状菌


■人の体内は特別な場所

微生物が存在しない状態を無菌といいますが、人の体内の血液の流れの中には、通常、微生物が存在しません。つまり、人の血管の中は無菌であるのが正常な場所、つまり特別な場所となります。尿が貯まる器官である膀胱(ぼうこう)の中や、筋肉、骨、肝臓、腎臓、脳など体を構成する組織の内部も、通常は無菌です。

これらの通常は無菌である場所に、なんらかの理由で微生物が入り込むと、人はしばしば感染症を起こします。

また、肺や気管支は、体の働きによって微生物の侵入からある程度防御されており、通常は、あまり多くの微生物が存在しません。

ただし、なんらかの理由で感染力の強い微生物や大量の微生物が侵入してしまったような場合には、肺や気管支で感染症を起こすことがあります。


■皮膚は微生物に対するバリア

微生物は通常、皮膚から体の内部に入りこむことはできません。ですから皮膚は微生物に対するバリア(防御壁というべきもの)であるといえます。

しかし、在宅療養者が点滴のために血管カテーテルを挿入している場合や、手術後の創(きずのこと)が完全にはふさがっていない場合など、皮膚のバリアの一部が破れている場合には、微生物はそこから体内に入り込み、通常は無菌である場所まで到達することがあります。


■バリアを破る医療処置

特に血管カテーテルの場合には、入り込んだ微生物が血流に乗って全身をめぐってしまい、最も増殖しやすい部分まで、すぐに到達してしまいます。

このほか気管切開、胃瘻(いろう)チューブ、人工肛門など、皮膚のバリアの一部が破れる処置を行っている場合にも、そこから微生物が入りこむ可能性があります。


【医療従事者のためのリンク】血管カテーテル関連感染  手術部位感染


■粘膜の微生物に対する防御力

また、口、鼻、耳の中、咽喉や眼、尿管、膣、腸の内面などの粘膜から、微生物が体内に入り込むこともあります。とはいえ、粘膜にもある程度は微生物が侵入しないよう防御する力や、微生物を痰(たん)などとともに体外に送り出そうとする働きがあり、感染力の強い微生物だけが粘膜から体内へ入り込みます。

感染力の強い微生物としては、風邪(かぜ症候群)の原因となるウイルスなどがあります。


【医療従事者のためのリンク】かぜ症候群


■防御力を損なう医療処置

ところで、在宅療養者が気管切開を受けている場合や、口や鼻から経管栄養チューブを挿入したままにしている場合には、咽喉の微生物に対する防御機能が損なわれ、肺に微生物が入りやすくなってしまい、感染を起こす可能性が高まります。

また、喀痰吸引や自己導尿など、カテーテルを咽喉や尿管などに挿入する場合、その操作自体によって微生物をより奥へ、つまり肺や膀胱の方へ押し込んでしまい、感染を起こすこともあります。

ネブライザーや加湿器を使用している場合には、器具の定期的な消毒を行わなければ、加湿水の中で細菌が繁殖し、大量の細菌を肺に吸い込んで感染するおそれがあります。湿った場所を好んで生活している細菌があること*にも注意が必要です。


【専門用語】* 親水性のグラム陰性菌
【医療従事者のためのリンク】肺炎球菌とインフルエンザ菌  尿路カテーテル関連感染  呼吸器系装置関連感染  親水性のグラム陰性菌


■感染対策と消毒の役割

このように、健常な人の体には微生物の侵入から自分を防御する力がありますが、在宅ケアで行われる医療処置の中には、本来の防御力を弱め、微生物が侵入しやすい状態を作り出すものがいくつもあります。

ところが、在宅ケアが行われる環境、家族、在宅ケアスタッフ、そして在宅療養者自身から微生物をなくすことはできません。感染対策と消毒の主な役割は、それらの微生物が在宅療養者の体内に侵入する経路のどこかを断ち切ることにあります。


■微生物に対する抵抗力

なお、体内に微生物が侵入してしまっても、体内の抵抗力が微生物を封じ込めてしまえば、感染症にはかかりません。

人間は多くの微生物に対して抵抗力を持っています。しかし、高齢者や病気、障害で体力の低下している人などの抵抗力は弱まっているため、家族や在宅ケアスタッフにとっては無害な微生物でも、在宅療養者自身には有害である可能性があり、このことにも注意が必要です。


■ワクチン接種の目的

また、侵入した微生物が過去に感染症を起こしたことのある微生物であれば、体内の免疫の働きで、微生物を封じ込めてしまう場合もあります。

たとえば、はしか(麻疹)はとても感染力の強い麻疹ウイルスが原因ですが、一度かかれば、ほとんどの場合、人は免疫を獲得し、二度とはしかにかかりません。

こうした免疫の働きを利用して、人為的に微生物に対する抵抗力をつけようというのが、ワクチン接種です。

在宅療養者自身が適切なワクチン接種を受けることも有益ですが、インフルエンザワクチンのように、家族や在宅ケアスタッフがワクチン接種を受けて、まず自分自身を感染から守り、その結果として在宅療養者へインフルエンザをうつしてしまう可能性を減らすことが期待できます。


【医療従事者のためのリンク】基本的な予防策としての標準予防策  ワクチンによる免疫化



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