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Point

5.微生物の侵入を防ぐための主な方法(3)

   -家族・在宅ケアスタッフの手指の衛生-

ポイント:

在宅ケアにおける感染対策の中で、とても重要でありながら、しばしばなおざりにされているのが手指の衛生です。人の手の表面には無数の微生物が常に存在します。さらに手には外部からさまざまな微生物が付着します。
また、便には多数の微生物が存在し、血液には危険な微生物が存在することがあります。複数の在宅療養者を担当する在宅ケアスタッフは、手指の衛生に関する注意が特に必要です。


■手に常に存在する微生物

人の手の表面には無数の微生物が常に存在しています。手を消毒した場合、それらを減らすことはできますが、皮脂腺といわれるところに微生物が存在するため、完全に無菌にはなりません。常に皮膚の表面や皮脂腺に存在する種類の細菌* は、通常は感染の原因とはなりませんが、それでも在宅療養者の血流など、通常無菌である場所に入り込むと、感染の原因となることがあります。

したがって、カテーテルの挿入などの処置を行う人は、その処置の前に念入りな手洗いか手指消毒** をし、必要に応じて薄いゴム手袋をはめなければなりません。手袋をはめるのに、その前に念入りな手洗いや手指消毒をするのは、手袋をはめるときに、手で手袋の外側を汚してしまう可能性があるからです。


【専門用語】 * 皮膚常在菌 ** 衛生的手洗い
【医療従事者のためのリンク】手洗い概説  衛生的手洗い 手術時手洗い 標準予防策と接触予防策 ―手洗い― 皮膚常在菌


■外部から手に付着する微生物

また、人の手はさまざまなものに触れるため、外部からのいろいろな微生物* が付着します。家族や在宅ケアスタッフは、社会のさまざまな場所であらゆる微生物を手に付着させます。ものであれ人であれ、なにかに触れると、かならずそこにあった一部の微生物が手に付着し、同時に自分の手にあった一部の微生物が、触れたものや人に付着したと考えるべきです。

それにもかかわらず、適切な手洗いや手指消毒** をしないまま在宅療養者のケアを行ってしまうと、在宅療養者はさまざまな感染のリスクにさらされることになります。家族や在宅ケアスタッフには感染しない微生物でも、防御力や抵抗力の弱まっている在宅療養者には危険である可能性があるので注意が必要です。したがって、家族や在宅ケアスタッフは、帰宅時や訪問先到着時に、適切な手洗いか、手指消毒をしなければなりません。


【専門用語】* 皮膚通過菌 ** 衛生的手洗い
【医療従事者のためのリンク】手洗い概説  衛生的手洗い 標準予防策と接触予防策 ―手洗い―


■在宅ケアスタッフの場合

特に、在宅ケアスタッフの多くは、複数の在宅療養者を担当するため、ある在宅療養者にあった微生物を自分の手に付着させたまま、次の在宅療養者をケアしてしまい、その在宅療養者にうつしてしまうという危険性に注意する必要があります。また、訪問先への移動に用いる車のハンドルなどを汚染してしまうことも、避けなければなりません。なぜなら、訪問先到着時の適切な手洗いや手指消毒* をうっかり忘れてしまうこともありえるからです。

したがって、在宅ケアスタッフは、一軒の訪問ケアが終了したらそのつど、訪問先を出る前に念入りな手洗いか、手指消毒をしなければなりません。在宅ケアスタッフは、病院に勤務する医療従事者と同じように、職業上の責務として手指の衛生を確保する必要があります。


【専門用語】* 衛生的手洗い

【医療従事者のためのリンク】手洗い概説 衛生的手洗い 標準予防策と接触予防策 ―手洗い―


■手指が不潔になりやすいケア

オムツ交換をした後や使用済みのガーゼを取り扱った後など、在宅療養者の便、尿、嘔吐物、血液、体液、分泌物などが手についた場合には、ただちに石けんか手洗い用消毒薬を用いた適切な手洗い*をする必要があります。

それらのものに直接触れたつもりはなくても、その周辺には微生物が多数ちらばっていることが多く、しかも目には見えない場合が多いため、上記のような手が不潔になりやすいケアをした後は、適切な手洗いか手指消毒** をします。


【専門用語】* 標準予防策 ** 衛生的手洗い
【医療従事者のためのリンク】衛生的手洗い 標準予防策と接触予防策 ―手洗い―


■ゴム手袋をする場合とその理由

便や血液などに直接触れるおそれのあるケアをする場合、在宅ケアスタッフは、ケアの前に薄いゴム手袋をする必要があります*。なぜなら、便などの中には多数の微生物が存在し、血液などの中には難治性の肝炎の原因となるウイルスなど危険な微生物が存在する場合があるからです。

手袋をはめてケアした場合でも、手袋をはずした後、適切な手洗いか手指消毒** をします。というのは、手袋をはずすときに、手袋の外面に手が触れて、手を汚してしまうことが多いからです。

この場合、気がつかないうちに手を汚してしまうことが多いので、手袋をはずした後は、かならず適切な手洗いか手指消毒** をすることにします。


【専門用語】* 標準予防策 ** 衛生的手洗い
【医療従事者のためのリンク】衛生的手洗い 標準予防策と接触予防策 ―手洗い―


■誰のための手袋か

このように、在宅ケアスタッフは、便や血液などが付着したものを扱う場合に、手袋をはめるなどの十分な注意を払う必要があります。また、手指だけでなく、ほかの在宅療養者にも使用する器具などに血液などがついたら、それを拭き取った上で消毒をする必要があります。これは主に、そのスタッフが担当するほかの在宅療養者を感染から守るためです。

また、血液のついた針などを、うっかり在宅ケアスタッフ自身の指に刺してしまわないように、細心の注意を払う必要があります。これは主に、在宅ケアスタッフ自身を感染から守るためです。血液の中に危険な微生物が存在するかどうかは、検査をしなければわかりませんので、どんな人の血液についても、危険な微生物がいることを想定して針刺し事故を防ぐことが大切な基本です。

しかし、在宅療養者の家族や本人まで手袋をはめる必要があるかどうかの判断はまた別であり、当事者の希望により異なるものと思われます。とはいえ、カテーテルを挿入する場合に手袋をはめるのは、カテーテルの挿入を受ける在宅療養者自身を感染から守るためでもあるのです。


【医療従事者のためのリンク】血中ウイルスに対する予防策 標準予防策と接触予防策 ―手洗い― 標準予防策と接触予防策 ―器具・環境―


■手指の衛生が必要な場合のまとめ

以上のことをまとめると、表1のようになります。食事の前の手洗いなど、一般でも行う普段の手洗い*も、当然行います。


【専門用語】* 社会的手洗い(社交的手洗い、日常的手洗いともいう)
【医療従事者のためのリンク】手洗い概説



表1:手指の衛生が必要な場面

在宅療養者自身家族在宅ケアスタッフ
訪問先への
到着時
―該当しない−―該当しない−必要
医療処置の前(自己処置の場合)
必要
必要必要
ケアの終了時(自己ケアの場合)
場合により必要*
場合により必要*必要
(訪問先を出る前に)*
自宅へ帰宅時(自分で歩きまわれる場合などは、家族と同様に)
必要
必要(一般と同様に普段の手洗いが)
望ましい
トイレの後(自分でトイレに行ける場合などは、一般と同様に普段の手洗いが)
必要
(一般と同様に普段の手洗いが)
必要
(一般と同様に普段の手洗いが)
必要
食事の前(自分で食べられる場合などは、一般と同様に普段の手洗いが)
望ましい
(一般と同様に普段の手洗いが)
望ましい
(一般と同様に普段の手洗いが)
望ましい

* オムツ交換や使用済みガーゼの取り扱いなど、便、尿、血液、体液などが手についた場合や、つくおそれのある処置のあとは、ただちに手指の衛生が必要。


【医療従事者のためのリンク】標準予防策と接触予防策―手洗い−


■在宅ケアにおける微生物の伝播経路

微生物が人から人へ直接的に、あるいは物を経由して間接的にうつることを伝播といいます。伝播したからといって感染するわけではありませんが、伝播する経路を断ち切ってしまえば、人から人へと感染しません。

在宅療養者・家族・在宅ケアスタッフを、微生物の伝播経路の観点から見ていくと、図3のようになります。
赤い矢印は感染の直接の原因となる伝播経路を示しています。
黒い矢印は、その背景となる伝播経路を示しています。
表1のような場面で手指の衛生を確保すれば、これらの経路をどこかで断ち切ることができ、感染を予防することができます。


図3:在宅ケアにおける微生物の伝播経路
在宅ケアにおける微生物の伝播経路

また、この図3のように、在宅ケアスタッフは家族よりも多くの伝播経路をかかえていることに注意が必要です。病院に勤務する医療従事者は、より多数の、しかも防御力や抵抗力のとても弱い入院患者を担当していることが多く、在宅ケアスタッフよりも多くの重大な伝播経路をかかえていますが、在宅ケアスタッフも程度の差はあれ、基本的には病院に勤務する医療従事者と同じような立場にいると考えられます。


【医療従事者のためのリンク】老人施設・在宅医療における感染対策



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