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Point

7.在宅ケアにおけるMRSA


ポイント:

MRSAは、防御力や抵抗力のとても弱まっている入院患者において、つまり病院において問題となっていますが、在宅ケアにおいては、それほど大きな問題ではありません。
在宅ケアにおいては、日常的に必要な感染対策をきちんと行っていれば、MRSAを保菌している場合であっても、特別の対策を行う必要は特にありません。


■MRSAとは

MRSA* 繁用されている抗菌薬(いわゆる抗生物質など)が効きにくくなった黄色ブドウ球菌という細菌で、病院の中にしばしば存在します。

さらに、MRSAは防御力や抵抗力のとても弱まっている入院患者には容易に感染し、感染すると普通の黄色ブドウ球菌の場合よりも治療しにくい感染症となるため、病院で問題となっています。とはいえ、MRSAにも有効な抗菌薬がすでに普及していますので、過剰な不安をいだく必要はありません。


【専門用語】* メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
【医療従事者のためのリンク】黄色ブドウ球菌  療養型病棟におけるMRSA予防策


■在宅療養者にとってのMRSA

入院を経験した在宅療養者の方々は、病院内で伝播したMRSAを鼻、口、咽喉、わきの下、会陰部や肛門などに保菌(感染ではなく、単に保有していること)した状態である場合があります。血管カテーテルなどを挿入している場合には、自分で保菌しているMRSAが皮膚のバリアが破けている場所に付着しないよう注意しなければなりません。たとえば、自分で医療処置をしている途中で、自分の鼻や口のまわりなどを手で触ってしまった場合には、もう一度手洗いをするか手指消毒をします。

とはいえ、MRSAを保菌していない場合でも、基本的には同じことをする必要があります。つまり、基本的には日常的な感染対策】* をきちんと守ることで十分であり、特別なことをする必要があるわけではありません。

なお、MRSAを保菌している在宅療養者が、MRSAをばらまいているわけではありません。鼻の中などにMRSAが存在しているということであり、そこで急速に増殖しているわけではありません。しかし、どこかに感染してしまうと急速に増殖してしまい、その感染部位によっては特別な注意** が必要となる場合もあります。


【専門用語】* 標準予防策 ** 接触予防策
【医療従事者のためのリンク】一般病棟におけるMRSA予防策


■家族にとってのMRSA

家族がMRSAを保菌している在宅療養者のケアをする場合にも、鼻の中などにあるMRSAを、皮膚のバリアが破けている場所に入れてしまわないように注意しなければなりません。

とはいえ、在宅療養者自身の場合と同様、日常的な感染対策* をきちんと守ることで基本的には十分であり、特別なこと** をする必要があるわけではありません。

一方、家族は、病院から家庭に持ち込まれたMRSAが、自分自身にうつることについて、特に心配する必要はありません。黄色ブドウ球菌を保菌している人は、社会にたくさん存在します。病院に存在するMRSAの感染力や病原性は、ふつうの黄色ブドウ球菌と特に異なるわけではありません。

また、家族自身が医療従事者であるような特殊な場合などを除き、自分にうつったMRSAを他人にうつしてしまう可能性についても、特に心配する必要はありません。

なお、欧米では最近、毒性の強い「市井獲得MRSA」という黄色ブドウ球菌が一部で問題となっていますが、これは病院に存在するMRSAとは別のものであり、混同して心配をする必要はありません。


【専門用語】* 標準予防策 ** 接触予防策


■在宅ケアスタッフにとってのMRSA

在宅ケアスタッフが、MRSAを保菌している在宅療養者のケアをする場合にも、鼻の中などにあるMRSAを、皮膚のバリアが破けている場所に入れてしまわないように注意しなければなりません。

とはいえ、在宅療養者自身や家族の場合と同様、日常的な感染対策をきちんと守ることで基本的には十分であり、特別なことをする必要があるわけではありません。

一方、在宅ケアスタッフにとっても、自分自身がMRSAに感染するという意味では、家族と同様に心配をする必要はありません。しかし、在宅ケアスタッフの手や、持ち回る器具などが、ほかの在宅療養者へのMRSAの伝播経路にならないように注意する必要はあります。 とはいえ、MRSAを保菌している在宅療養者であっても、感染していないかぎり、日常的な感染対策* をきちんと守ることでほとんど十分であり、特別なこと** をする必要はあまりありません。

粘膜に触れる器材や血流などに触れる器材は、それを使用した在宅療養者のMRSA保菌の有無にかかわらず、常に『4.微生物の侵入を防ぐための主な方法(2)』で説明された方法で衛生管理します。それらの方法はMRSAにも十分有効です。

在宅療養者がMRSAを保菌しているかどうかが、はっきりわかっている場合もありますが、検査をしていないためにわからない場合も多くあります。常に基本的な感染対策を忠実に守ることが必要です。


【専門用語】* 標準予防策 ** 接触予防策
【医療従事者のためのリンク】療養型病棟におけるMRSA予防策 一般病棟におけるMRSA予防策


■保健施設・介護サービスにおけるMRSA

デイケアセンターなどの保健施設や巡回入浴サービスなどの介護サービスにおいては、MRSA保菌の有無にかかわらず、在宅療養者の排泄や入浴などのケアを行うたびに、職員は手洗いを行う必要があります。保健施設内でカテーテルの挿入など医療処置が行われる場合には、病院と同様の感染対策が必要です。

このような日常的に必要な感染対策* が行われているかぎり、MRSAを保菌する在宅療養者を受け入れる場合でも、特別な対策** はほとんど必要ありません。

MRSAを保菌している在宅療養者の肌が密接に接触した便器や浴槽を念のため消毒する場合もありますが、基本的には洗剤を用いた入念な清掃で十分です。ソファー、テーブル、食器、手すりなどについては一般的な清掃をし、特別な対策をする必要はありません。室内環境を経由したMRSAの伝播が問題となるのは、病院のように防御力や抵抗力のとても弱まっている入院患者が存在する場合のみであるからです。

したがって、MRSAを保菌する在宅療養者についても、ほかの在宅療養者と同様に受け入れることができ、また、そのようにするべきであると思われます。

在宅療養者がMRSAを保菌しているかどうかが、はっきりわかっている場合もありますが、検査をしていないためにわからない場合も多くあります。常に基本的な感染対策を忠実に守ることが、在宅療養者を受け入れる保健施設や介護サービスには必要です。


【専門用語】* 標準予防策 ** 接触予防策
【医療従事者のためのリンク】療養型病棟におけるMRSA予防策



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